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YouTuber向けに優しく解説!著作権の基本の「き」 前編(弁護士監修)

YouTubeでの動画投稿を含め、クリエイターの方々にとっては、侵害する場合も、侵害される場合も含め、「著作権」は切っても切り離せない重要なものかと思います。

 

・写真を勝手に利用された!やめさせたい!

・動画を無断転載された!どうすればいいの?

・動画にアニメのポスターが映り込んでしまった!撮りなおすべき?

・この人の動画、自分の動画と似てるんだけど・・・

 

など、クリエイターにとって著作権に関する悩みは尽きないのではないでしょうか?

 

自分の権利を守るためにも、他人の権利を侵害しないためにも、プロのクリエイターとして、最低限のことくらいは知っておいて損はありません。

 

そこで、まずは「著作権」の基本を押さえるべく、今回は、著作権の基本の「き」を解説します。

 

応用的なものについては個別に記事を書いているので、そちらもぜひご参考下さい。

 

 

難しい表現を含む部分もありますので、まずは太字の部分を中心に読み進めてみてください。

 

※本記事は、法律を扱う記事となります。法律記事の執筆方針については、こちらの記事をご参考ください。

 

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著作権はいつ発生するの?登録はいる?

 

日本の法律では、「著作物」に対する法的な保護は、著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)に定められています。

 

著作権法には、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法第2条1項1号)と定められ、「著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。」(著作権法51条第1項)と定められています。

 

そして、「著作者は、次条第一項、第十九条第一項及び第二十条第一項に規定する権利(以下「著作者人格権」という。)並びに第二十一条から第二十八条までに規定する権利(以下「著作権」という。)を享有」(著作権法第17条第1項)し、「著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。」(同第2項)と定められています。

 

したがって、著作権は、著作物を作成したその瞬間に発生し、「登録」や「手続」は一切不要です。

 

例えば、撮影をしたその瞬間、家で動画を作成したその瞬間、ブログを書いたその瞬間、著作権は発生し、動画をアップロードする前、ブログの公開の前から著作権は発生しています。

 

よくある「Copyright ©~」という表示も、日本においては不要です。

 

 

どんな場合に著作権は発生するの?

 

 

結論から言うと、自分で言葉を考えて執筆したブログの記事や、自分で考えて撮影した動画、編集した動画には、基本的に著作権は発生するものと思って大丈夫です。

 

例えば、YouTuberのヒカキンさんが自身のチャンネルで現在公開している動画は、すべて著作権が発生していると考えてよいですし、このブログ記事にも著作権は発生しています。

 

では、どのような場合に著作権が発生するか、具体的に見ていきましょう。

 

まず、ある作品を作成した者に著作権が発生するためには、その作品が「著作物」である必要があります(著作権法17条以下参照。)。

 

そして、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(著作権法第2条1項1号)とされています。

 

著作物と認められるための要件

①創作性

②表現したもの

③文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

 

この3つの要件だけを見ても、いまいちピンとこないと思いますので、一つ一つ詳しく見ていきましょう。

 

① 創作性

 

「創作性」とは、簡単に言えば、「個性が表れていること」を意味します。

 

自分で考えて作った動画や、小説などは、その作成者の個性が通常現れるものですので、自分なりに創意工夫して作成した作品については、この要件は満たすものと考えて良いでしょう。

 

これに対して、創作性がない、つまり、個性がないものとされる例としては、非常に短文の表現やありふれた表現など、他の者が容易に同じ表現に行きつくことが想定されるような表現のものや、他の作品等を完全に真似したようなものが挙げられます。

 

「非常に短文の表現やありふれた表現など、他の者が容易に同じ表現に行きつくことが想定されるような表現のもの」について少し補足します。

 

【検討事例】

Aさんは、日ごろAさんの身の回りに起きた出来事を動画にまとめ、YouTubeに動画投稿をしているYouTuberです。ある日、Aさんが、電車で妊婦の方に席を譲ったところ、妊婦の方が、Aさんに対し、にっこりしながら「ありがとう。」と言いました。Aさんは、その言葉がうれしく、その電車での出来事を一本の動画にまとめました。世の中に「ありがとう。」という言葉が増えれば、世の中はもっと良くなる、ということを伝えたかったAさんは、動画タイトルもこだわったものにしたいと考えました。3時間かけて、悩みに悩んだ結果、シンプルなものが良いと考え、動画タイトルを、「ありがとうと伝える癖をつけよう。」にしました。

その動画を見たYouTuberのBさんは、「これはいい動画だ」と思い、自分がお年寄りにバスで席を譲った話に置き換えて動画を作成し、動画タイトルを、「ありがとうと伝える癖をつけよう。」にし、YouTubeに動画を投稿しました。

 

Aさんは、3時間もかけて、自分なりに工夫をし、動画タイトルを考えているので、創作性を認めるべきでしょうか?

 

直感的に、認めるべきではない、と考えた方のほうが多いのではないでしょうか。

 

その直感は正しいです。

 

表現に著作権を認める、ということは、それを真似ることが制限されることになります。

 

したがって、「ありがとうと伝える癖をつけよう。」といった、非常に短文な表現、ありふれた表現に著作権を与えてしまうと、Aさん以外の人による表現活動が阻害されてしまいます。

 

そこで、このような「非常に短文の表現やありふれた表現など、他の者が容易に同じ表現に行きつくことが想定されるような表現のもの」については、創作性がない、とされるのです。

 

この「創作性」の要件との関係で問題になりやすいのは、動画タイトルと思います。

 

動画タイトルについても、この創作性の要件が認められる可能性、つまり、著作権が認められる可能性はあります。

 

しかし、動画タイトルは、極めて短文の表現であるため、著作権が認められる場合は極めて限定的であると考えられます。

 

動画タイトルと著作権については、判例を参考にしながら、こちらの記事(動画タイトルには著作権は認められない?)でより深い検討そしていますので、ぜひご参照ください。

 

② 表現したもの

 

「思想又は感情」ではなく、「思想又は感情を表現」したものである必要があります。

 

つまり、アイディアは著作権法上保護されない、ということです。

 

動画を実際に撮影した、動画を実際に編集した、小説を実際に書いたような場合には、それらの動画や小説は、問題なく「表現したもの」に該当すると考えて良いです。

 

しかしながら、動画のアイディアをパクられた!とか、小説のストーリーを盗まれた!というような場合、道義的な責任は別として、少なくとも著作権侵害にはならない場合がほとんどといって良いでしょう。

 

この点を、先ほどのAさんの動画とBさんの動画の例をとって詳しく見ていきましょう。

 

 【検討事例】

YouTuberのAさんの投稿した、「ありがとうと伝える癖をつけよう。」という動画は、Aさんが実際に体験した電車内での出来事をAさんが語る動画である。その内容は、Aさんが、その体験を、10分程度にわたってひたすら話つづけるものであり、その時見た風景や、周りの人たちの反応、Aさんの気持ちの変化などを「Aさんの心の中のセリフ」や、「独特な比喩表現」なども交えながら、語っているものである。

 

侵害可能性

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ア、Bさんの動画は、Aさんの話している言葉を一字一句真似しており、単に「電車」を「バス」に、「妊婦」を「お年寄り」に変更した以外は、Aさんの語っている内容と全く同じものである。

 

イ、Bさんの動画は、Aさんの話している言葉を一字一句真似しているものではないが、Aさんの話しの構成を真似ており、Aさんの心の中のセリフや、独特な比喩表現など、部分的に、Aさんの話している言葉と完全に一致している。

 

ウ、Bさんの動画は、「席を譲ってありがとうと言われ、感動し、ありがとうの大切さを知った」という、動画のアイディア・ストーリーは同一だが、Bさんが語っている内容は、Bさん自身が独自に考えたものであり、Aさんの語っている言葉と、Bさんの語っている言葉のうち、同一であるのは、動画内で何度も出てくる「ありがとうと伝える癖をつけよう。」という言葉くらいである。

 

上記のうち、ウは、アイディアのみを盗むものなので、残念ながら著作権侵害にはなりにくいものと考えられます。

 

ただし、イや、アのように、アイディアの範囲を超えて、具体的な表現を盗んでいるような場合には、著作権侵害とされる可能性が高まるといえるでしょう。

 

アは、著作権侵害とされる可能性が極めて高いものと考えられ、イは、盗用の度合い、程度によっては、著作権侵害とされる可能性が高いといえるでしょう。

 

この点の詳細は、「著作権基本の「き」後編(弁護士監修)」をご参照ください。

 

③ 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの

 

結論から言うと、この点は、あまり気にしなくて良いです。

 

この要件は、工業製品など、別の法律で保護されている物について、そちらの法律に委ねます、というものです。

 

つまり、YouTuberの作成した動画は、基本的に「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」と言ってよいといえます。

 

 

なお、著作権法の条文を読み進めていくと、著作権法第10条に、著作物の例示があります。

 

これは、「例示」ということからもわかる通り、あくまでも、法律上保護される著作物の例を示したものであり、上記の①から③を満たすものであれば、「著作物」となるため、あまり気にしなくて大丈夫です。

 

 

 

少し長くなりましたが、著作権の基本として、まずはどんな場合に著作権が発生するのかを見てきました。

 

YouTuberとの関係で大切なのは、次の3点です。

 

YouTuberにとって大切な点

 ・撮影・編集した動画は、その瞬間から、著作権が発生する。
 ・動画タイトルは、著作権では保護されない場合がほとんどである。
 ・アイディアは、著作権では保護されない。

 

 

次回は、どんな場合に侵害になるのかを解説していきますので、ぜひ後編の記事もご覧ください。

 

 

 

 

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