事業活動において法律が重要であることは言うまでもなく、YouTuberもその例外ではありません。
すべての法的問題について、専門家に聞けるだけの収益があればよいですが、インターネットを用いて、自分なりに調べた経験があるという方も多いのではないでしょうか?
しかしながら、法律の専門家から見ると、インターネット上に存在する法律に関する記事や情報は、本当に信じられないようなことが山ほど書いてあります。
そこで今回は、インターネット上で法律問題を調べるコツをお伝えします。
① 白黒付くとは限らない
よく、弁護士に聞けば白黒はっきりできる、と思っている方を見かけます。
しかし、法律の専門家に聞いたところで、白黒はっきりできる場合もあれば、出来ない場合もあります。
この点を知っていれば、不用意に答えを求めすぎたり、調べすぎたりすることを防げると思います。
では、何故白黒ハッキリできない場合があるのかを、簡単な事例を用いて確認してみましょう。
【検討事例】
Aさんは、昨年の10月にBさんに貸した100万円を返してほしいと思い、早く返済するようメールで伝えましたが、メールを受け取ったBさんは、「100万円を借りたことはない。」と返信したのみで、100万円を返そうとはしません。そこで、Aさんは、訴訟を提起し、100万円を回収することにしました。
裁判では、
⑴ 事実関係を立証できるか。
⑵ 立証された事実関係にどのように法律が適用されるか。
上記の二つが大切になります。
⑴の段階については、証拠により、事実関係を立証する必要があります。
検討事例では、Aさんは、100万円を貸したと主張していますが、Bさんは借りてないと言っており、どちらが真実かわかりません。
そのため、AさんがBさんに対して、100万円を貸したことを、証拠により立証しなければなりません。
100万円の貸付であれば、契約書や、振り込みの記録が残っている通帳、メールでのやり取りなどが証拠となります。
Aさんが真実として100万円を貸し付けていた場合でも、この証拠が無かったり、不十分だったりすると、裁判では負けてしまうわけです。
そして、どのような証拠があれば、「100万円を貸した」という事実が認められるかについては、最終的には裁判官の判断にゆだねられるため、裁判前に100パーセントの答えを出すことはできません。
検討事例の場合には、あまりこの点は問題になりませんが、⑵の段階についても、白黒ハッキリしない場合があります。
法律は、世の中のさまざまな事柄に対応できるように作られており、個別具体的な場合に、その法律が、どのように適用されるかどうかは、明文上明らかでない場合が数多く存在するのです。
法律の条文から言えることもあれば、条文からは明らかにできないこともある、ということです。
法律の専門家の言えることは、法律の条文の規定や、過去の裁判例に照らして、問題となっている事件について、どのような判断が下される“可能性が高いか”という点について、見通しを立てることにとどまり、最終的に白黒つけるのは、裁判以外にはないこととなります。
「行列のできる法律相談所」でも、弁護士の間で意見が割れたり、また、最終的に「●●が認められる確率は●%」といったような結論となっているのもこのためです。
法律問題を自分で調べるときは、この点をしっかり押さえておくとよいでしょう。
また、弁護士に意見を求めるときも、この点をおさえておくことは大切です。
② 「誰」が書いているか
これは言うまでもないことではありますが、法律を知っている人が書いているかどうかを、最低限確認してみるようにしましょう。
それが、法律の専門家以外である場合、たとえその人が「知っている」と思っていても、勘違いである可能性が多分にあります。
執筆している方が、「弁護士から聞いたこと」として記載している場合も、注意が必要です。
なぜなら、聞き手が正しく理解できていなかったり、不適切な省略をした結果、情報が歪んでしまっている可能性があるからです(実際かなりあります。)。
最近では、法律事務所によるまとめ記事も多数存在しますので、まずはそういった記事を参考にするとよいでしょう。
また、法律については、省庁のサイトに説明資料が掲載されていることがあり、また、条例については、地方公共団体のサイトに説明資料等が掲載されていることがあり、これらの信用度は高いといえるでしょう。
ちなみに、余談ですが、警察官は本当に、本当に法律を知りません。
③ 法律上の根拠が示されているか
法律問題は、法令や条例に明文の根拠があり、その文言を解釈することを基本とします。
そして、その解釈について、蓄積された判例が存在します。
法律問題に関する記事を読むときは、この法令・条例や判例が根拠として明示されているかを確認し、そして、その原典にあたってみることをお勧めします。
法律の知識がないまま、自分で判断してしまうのは危険ですが、条文は日本語で書かれているので、大まかな判断はできるかと思います。
条文の根拠を示していないネット上の法的見解は、無視するべきです。
法律の条文は、以下のe-Gov法令検索を使ってみるとよいでしょう。
法律記事を読むときは、ぜひ以上のことを参考にしてみてください。