視聴数を稼ぐうえで重要とされる「関連動画」について、YouTubeの公式情報を根拠として、全5回にわたる徹底的な考察をしています。
前2回では、YouTubeがどのような動画を提案したいと考えているのか、そして、その動画をどのように特定するのかを、YouTube上の根拠を用いながら確認してきました。
今回はいよいよ、これらの情報を踏まえて、「YouTubeがどのようなアルゴリズムを組んでいるのか」を見ていきます。
まだ第1回、第2回を見ていない方は、以下のリンクからご覧下さい。
さて、いよいよ本題のYouTubeで採用される関連動画に関するアルゴリズムについての考察です。
まずは、YouTubeの公式情報をまとめて振り返ったうえで、どのようなアルゴリズムが採用されているのかを考察していきます。
前回までのまとめ
YouTubeは、①どのような動画を視聴者に提案するべきか、②その動画を表示するためにどのような仕組み(アルゴリズム)にするべきかを日々研究しており、それぞれの視点から、YouTubeの公式情報を眺めると、以下のことが言えることを解説してきました。
①の視点
・視聴者が次に見たくなると予測される動画が表示される(動画との関連性・視聴者との関連性)
・視聴者が見て良かったと思うことが予測される動画が表示される(動画の質)
②の視点
・関連性の判断に関する検討①(動画との関連性)
(1)人ではなくアルゴリズムによって把握している
(2)YouTuberから得られる情報と視聴者の行動から得られる情報を分析している
(3)動画の内容に関する視聴者の判断を取り入れている
・関連性の判断に関する検討②(視聴者との関連性)
(1)人ではなくアルゴリズムによって把握している
(2)視聴者の様々な行動から分析している
(3)視聴者による選択を認めている
・動画の質の判断に関する検討
(1)人ではなくアルゴリズムによって把握している
(2)エンゲージメントを重視している
(3)視聴時間も重要視している
(4)新しいクリエイターにも目を向けている
YouTube関連動画のアルゴリズムを考える
以上に述べた通り、YouTubeは限られた情報から、試行錯誤繰り返して、関連動画に表示する動画を決定しています。
その大まかなプロセスは、
(A)関連性の仮決定 ⇒ (B)関連性のテスト ⇒ (C)関連性の判断
という3段階になるものと思われます。
つまり、(A)限られた情報から、関連性がありそうなものを抽出(仮決定)し、(B)その仮決定に基づき、関連性をテストし、(C)そのテスト結果に基づいて、関連性を判断する、という流れをとるものと考えられます。
これらは、基本的には、YouTubeが保有している視聴者に関する情報や、動画に関する情報を活用して行われるものですが、YouTubeが新しいクリエイターも重要視していることから、そういった情報がない動画についても、情報を集めるための工夫をしていることが想定されます。
これらを踏まえると、関連動画に表示させる動画を選定するアルゴリズムは、(ア)再生数が少ない動画が関連動画に表示されるアルゴリズムと、(イ)再生数をある程度稼げている動画が関連動画に表示されるアルゴリズムに分けて考えるべきものと思われます。
(ア)再生数が少ない動画が関連動画に表示されるアルゴリズム
では、具体的に見ていきましょう。
再生数が少ない動画は、情報が限りなく少ないため、以下の①→②→③の流れ(アルゴリズム)が取られることになるでしょう。
【アルゴリズムの概要】
① 文字情報から関連動画の候補を探す(関連性の仮決定)
以下の情報1~3をもとに、「どの動画を」「誰が」視聴しているときに関連動画として表示するかを仮決定する
情報1:他の動画の文字情報(タイトル、タグ、概要欄など)
情報2:他の動画の視聴者の行動情報(視聴履歴、視聴時間など)
情報3:新規動画の文字情報(タイトル、タグ、概要欄など)
② 仮決定に従い、新規動画を関連動画として表示し反応を見る(関連性のテスト)
③ ②から得られた統計的データに基づいて関連動画として表示すべきか決定する(関連性の判断)
※これらは、YouTubeの公式情報ではありません。あくまでもYouTubeが公式に発表している情報から個人的に考察した結果です。
再生数が少ない場合、動画に対する視聴者の行動から、他の動画と関連付けることが困難であるため、YouTuberから得られる情報の重要性が特に大きいといえるでしょう。
そのため、YouTuberから得られる情報をもとに、仮の関連動画候補を探し出し、実験的な提示を繰り替えすものと思われ、上記のようなアルゴリズムが想定されます。
もっとも、動画の内容と全く関係のない動画タイトルや説明は、規約により禁止されているため、ここである程度の絞り込みは機能するはずです。
(1)関連性の仮決定(アルゴリズム①)
①で選別される「候補」が少ないと、そもそも関連性を見出せる動画候補が少なくなってしまいます。
例えば、犬の動画なのに「犬」と記載されていなければ、他の「犬動画」と関連付けられません。
また、「犬」に留まらず、「犬の散歩」まで書けば、「散歩」動画との関連性、「犬の散歩は健康にいい」まで書けば、「健康」との関連性、といった具合に、説明を充実させるほど、関連する動画の候補が増えていくはずです。
そして、これが重要なのですが、投稿した動画が、誰が好んで見るのかは、わからないということです。
「犬の動画だから、他の犬の動画を見てくれている人が最も視聴してくれるはずだ」と思っていても、他の犬の散歩動画の視聴者に表示したときにより良い反応があったり、ほかの健康関係の動画に表示したときにより良い反応があったりし得るわけです。
また、説明文が少ないと、YouTubeから見たときに、「よくわからない動画」となってしまう可能性があります。
例えば、動画タイトルと説明欄に「犬」とだけ書いたところで、それが犬の何の動画なのかわからず、どの動画の関連動画として表示していいのかがわからなくなります。
「わからない」ということは、ある動画の関連動画として投稿動画を表示したときに、それが不適切である可能性が高まるわけです。
当然、YouTubeとしては、関連動画として不適切な動画を表示することを避けたいはずですから、情報が少なすぎると、そもそも動画を関連動画として表示しない、ということになりかねません。
(2)関連性のテスト(アルゴリズム②)
②は、再生数が少ない動画に足りていない「視聴者の行動」を確認する段階です。
動画タイトルや説明欄、その他の情報から、ある動画(動画Aとします)の関連動画として表示してみたとしても、投稿動画が実際に再生されなかった場合、「動画Aの視聴者に投稿動画を表示したところ、“視聴者は投稿動画を視聴しない”という行動をした」と認識されることになります。
動画Aの関連動画として、投稿動画を何度か表示したのに、一度もクリックされなかったのであれば、「動画Aの視聴者は、投稿動画に興味がない」というデータとして残ってしまうことになり、その後動画Aの関連動画として表示されることはなくなるでしょう。
また、動画Aの関連動画として表示された投稿動画を視聴者がクリックしたとしても、視聴者が投稿動画の視聴をすぐにやめてしまった場合、「動画Aの視聴者に投稿動画を表示したところ、視聴者は投稿動画を再生したものの動画の内容に興味を示さなかった」と認識されることになります。
これが、YouTubeが抽出した関連動画の候補である動画A、動画B、動画Cに対して繰り返されることになります。
ここで大切なのは、
・タイトルとサムネイルが悪いと、どの動画に関連動画として表示されたとしても、結局クリックされない
・動画そのものの質が悪いと、どの動画に関連動画として表示されたとしても、結局視聴をすぐにやめられてしまう
ことです。
つまり、そもそもクリックされないタイトルやサムネイルだったり、そもそもつまらない動画内容だと、YouTubeが抽出したすべての関連動画との関係で、「関連しない動画」と判断されてしまうことになるわけです。
(3)関連性の判断(アルゴリズム③)
ここまで来ると、YouTubeは、当該新規動画に関する情報を持つことになります。
そのため、ある動画の関連動画として表示した結果、高確率でクリックされ、しかも高確率で動画の全てを視聴したり、高評価等を押す行動をとった場合には、当該動画の関連動画として引き続き表示されることになるでしょう。
また、ある動画の関連動画として表示した結果、「高確率」とまでは言えなくとも、一定程度クリックされ、一定程度の人が動画の全てを視聴したり、高評価等を押す行動をとった場合には、当該データをもとに、他の適切な関連動画の候補が探されることになるでしょう。
しかし、どの動画に表示しても、誰にもクリックされなかったり、クリックされても、すべての人がすぐに動画を見るのをやめたり、高確率で低評価を押す行動をとった場合には、今後関連動画として表示されなくなるでしょう。「自分の動画が関連動画に表示されていない」と思っている人は、おそらくこのパターンかと思います。実は表示されているものの、そのチャンスをものにできていないわけです。
(イ)再生数がある程度稼げている動画が関連動画に表示されるアルゴリズム
再生数がある程度稼げている動画は、以下の①→②→③→④→⑤の流れ(アルゴリズム)が取られることになるでしょう。
【アルゴリズムの概要】
① 当該動画を再生した視聴者の行動を分析
② 視聴時間の長い視聴者、エンゲージメントの高い視聴者の共通点を抽出
③ ②の結果と文字情報から関連動画の候補を探す
④ 関連動画に表示してみて、反応を見る
⑤ ④から得られた統計的データに基づいて関連動画として表示するか決定される
※これらは、YouTubeの公式情報ではありません。あくまでもYouTubeが公式に発表している情報から個人的に考察した結果です。
(1)関連性の仮決定(アルゴリズム①~③)
①②③の段階は、例えば、「投稿動画を長時間視聴する人は、その直前に動画Bをよく見ている」とか、反対に「動画Cの後に投稿動画を見た人は、投稿動画の視聴をすぐにやめてしまう」などです。
こうしたデータがあれば、動画Cではなく、動画Bのほうが相性がよく、動画Bの関連動画として表示しよう、となるわけです。
別の視点から見ると、例え再生回数が稼げても、長時間視聴してくれる視聴者がいないと、他のすべての動画との関連で、関連性が低いと判断される可能性がありますし、「関連動画として表示したところで、どうせまたすぐに視聴をやめられてしまう動画である」という推定が働くため、YouTubeとしては、関連動画として積極的に表示したくない動画、となるでしょう。
これに対して、長時間視聴してくれる視聴者の多い動画は、他の相性の良い動画の候補を見つけやすくなります。また、仮にそれが見つからなかったとしても、「質の高い動画だから、相性の良い他の動画さえ見つければ、この動画はもっと伸びる」という推定が働くため、YouTubeとしては、関連動画として積極的に表示したい動画、となるでしょう。
これは、YouTubeからの以下のメッセージにも整合します。
クリエイターの皆さんは、アルゴリズムの好き嫌いではなく、視聴者の好みを重視してください。視聴者が見たいものを作っていれば、アルゴリズムは後からついてきます。
(2)関連性のテスト・関連性の判断(アルゴリズム④⑤)
これ以降は、再生数が少ない動画に関するアルゴリズムとほぼ同様です。
①②を踏まえて、関連動画として表示してみて、その結果を踏まえて、当該動画の関連動画として引き続き表示されるか、他の動画の関連動画として表示されるか、又は関連動画として表示されないかが決定されていくことになるでしょう。
この記事のむすび
以上が、「YouTubeがどのようなアルゴリズムを組んでいるのか」に関する考察になります。
次回は、このアルゴリズムを踏まえて、投稿動画を関連動画に表示させる具体的方法を考察していきます。