今回は、著作権の基本、後編です。
前回の記事では、どんな場合に著作権が発生するのか、ということを解説しました。
今回の記事では、どんな場合に侵害になるのか、という点を解説していきます。
今回の記事も、難しい表現を含む部分もありますので、まずは太字の部分を中心に読み進めてみてください。
著作権はどんな場合に侵害になる?
著作権侵害は、次の①から④の要件を満たす場合に、成立します。
①著作物性
②依拠性
③類似性
④法定利用行為
上記のうち、②③については、著作権法の解釈により、必要とされる要件であり、④については、著作権法21条~28条等に規定される要件となります。①については、前編をご参照ください。
ここでは、次の事例を例にとって説明します。
【検討事例】
YouTuberのAさんが、Aさんの運営するYouTubeチャンネルに、動画①をアップロードしました。その後、YouTuberのBさんが、Bさんの運営するYouTubeチャンネルに、動画②をアップロードしました。Aさんは、BさんのYouTubeチャンネルにアップロードされた動画②が、動画①のパクリであると考えたため、弁護士のCさんに相談しました。(ここでは、動画そのものの著作権侵害のみを検討しています。)
「パクリ」といっても以下のようなグラデーションがあります。
侵害可能性 |
|
高 ↑
↓ 低 |
ア、動画②は、動画①と全く同じものであり、動画①を無断転載したものである:テレビ番組の無断転載など
イ、動画②は、動画①を勝手に編集したものである:テレビ番組を編集したものをアップロードする行為など
ウ、動画②は、動画①の内容を、Bさんが再現したものである。:映像そのものは別のものであるが、セリフや構図、カット割りなどが動画①と同じである
エ、動画②は、動画①の内容を、Bさんが再現したものである。:映像そのものは別のものであり、セリフや構図、カット割りなどが動画①と似ている
オ、動画②は、動画①の内容を、Bさんが再現したものである。:映像そのものは別のものであり、セリフや構図、カット割りなどの一部が動画①と似ている部分がある
カ、動画②は、動画①のアイディアが同じものである。:動画②は、「目が覚めたら人がいるが一番怖い説」という動画①の検証と同じ内容の検証を、Bさんが行うものであるが、企画の説明や、出演者の反応などは、動画①と動画②で異なるものである。 |
① 著作物性
まず、BさんがAさんの著作権を侵害しているというためには、Aさんに動画①についての著作権が成立している必要があります。
つまり、動画①に、著作物性があることが必要となります。
詳細は、前編で既に説明した通りですが、動画①を作成するに際して、Aさん自身がカメラを設置し、構図を考え、ストーリーを考え、そしてAさん自身が編集をしたものであれば、著作物性が認められるものと考えて良いでしょう。
② 依拠性
著作権侵害が認められるためには、「依拠性」が認められること、つまり、ある著作物を見聞きした者が、これを真似て、自己の著作物にそれを取り入れたと認められる必要があります。
言い換えれば、たまたま表現が一致したような場合には、著作権侵害は成立しません。
上記の例でいうと、ア、イは、たまたま一致したということはあり得ないので、ほぼ間違いなく依拠性が認められるといえるでしょう。
ウについても、細部にわたって一致している場合には、依拠していると認められる可能性が高いかと思います。
これに対して、エ、オについては、たまたま似たのか、真似たのか、争いになる可能性があります。
③ 類似性
著作権侵害が認められるためには、「類似性」が認められること、つまり、両著作物の間に共通部分があること、そして、その共通部分が、創作的表現であることが必要となります。
言い換えると、人の著作物を見て、それにインスピレーションを受けて別の著作物を作ったとしても、それらに共通点がなければ、著作権侵害にはなりません。
また、共通点があったとしても、その共通点が、著作権で保護される部分でなければ、著作権侵害にはなりません。
上記の例でいうと、ア、イは、完全に一致するものなので、ほぼ間違いなく「両著作物の間に共通部分があること、そして、その共通部分が、創作的表現であること」、つまり、類似性が認められるといえるでしょう。
ウについても、同様に、内容が完全に一致しているものなので、類似性が認められる可能性は高いといえます。
エ、オについては、どこが共通しているのかを検討し、その共通部分が創作的表現であると認めあれるか、を検討する必要があるでしょう。
これらに対して、カについては、前編で述べたとおり、アイディアには、著作物性が認められておらず、「共通部分が創作的表現である」とは言えません。したがって、類似性はないことになります。
④ 法定利用行為
著作権法上禁止される行為は、法律によって定められています。
例えば、コピーをとる行為(紙に印刷する、DVDに焼く、HDDに保存する)や、動画をサーバーにアップロードする行為、動画を配信する行為、他者の著作物を改変して、新しい著作物を生み出す行為などは禁止されています。
少し長くなりましたが、著作権の基本として、どんな場合に著作権侵害になるのか、を見てきました。
YouTuberとの関係で大切なのは、次の2点です。
YouTuberにとって大切な点
・たまたま被った場合には著作権侵害にならない(依拠性)。
・著作権侵害が認められるかどうかは、どの部分が似ているのか、どの程度似ているのかという点を検討することが大切である(類似性)。
以上で、著作権の基本の「き」の記事は終了です。
もう少し応用的な部分も記事にしていますので、ぜひそちらも参考にしてみてください。
疑問等があれば、コメントにご記載いただけると大変うれしいです。
個別に回答することは難しいかもしれませんが、新たな記事にすることも考えています。